厳密会計ルールは日本の成長を阻害するか?

2006-12-13

「ベンチャーは与えられたルールを壊してこそ成功する」なんてコラムもあったけれど。同じCNETに。

 

森祐治・情報経済を読み解く:厳密会計ルールが日本の成長を阻害する

今年になって急速に連結会計基準の整備が進み、その適用が本格化し始めた。が、この基準、最近の流れである企業間のアライアンスや、有限責任事業組合(LLP)の設立といったリスク分散などの経営手法の多様化と逆方向のベクトルを持ちかねない。特に、リスクの大きな技術革新やコンテンツ制作といった今後日本の注力する成長領域に与える負の影響は大きい。

数年前には「時価会計が不況の元凶だ」なんて本もあった。

 

まず,基本的なところから,

20061011日付けで企業会計基準委員会が公開した「連結財務諸表における子会社などの範囲の決定に関する監査上の取り扱い」

は,企業会計基準委員会のサイトには見当たりませんでした。

これは「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する監査上の取扱い」(監査委員会報告第60号,平成14年4月16日最終改正)のことでしょうか?

 

それに先行して発表された「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取り扱い」(200698日付け)のことだ。これら新ルールは、これまで曖昧だった連結会計の対象を法人だけではなく事業組合や投資ファンドにまで広げ、金の流れの透明性を高めたのが特徴だ。

「新ルールは,これまで曖昧だった連結会計の対象を法人だけではなく事業組合や投資ファンドにまで広げ」が微妙。

「連結財務諸表における子会社等の範囲の決定に関するQ&A」(監査委員会,平成14年4月16日最終改正)にはすでに,

子会社及び関連会社の範囲は,会社,組合その他これらに準ずる事業体(中略)が考えられます。(中略)投資法人及び中小企業等投資事業有限責任組合についても会社及び組合に準ずる事業体に含まれることになります。

とありますから。

この辺りはむしろ,新日本監査法人のこの記載の方が正しいと思われる。

投資事業組合が連結や持分法の対象とすべき子会社または関連会社の範囲に含まれる場合があることは明らかであり、連結原則などに従って、会社と同様に支配力基準および影響力基準を適用することとなります。

しかしながら、近時、投資事業組合に係る不適切な会計処理が指摘されており、その適用に関する取り扱いをより明確にすることが必要ではないかという意見があることから、本実務対応報告では、投資事業組合に対する支配力および影響力基準の適用について、実務上の取り扱いを示すこととしたものです。

本実務対応報告は、現行の連結原則などの下での実務上の取り扱いを明確化したものであり、新たな取り扱いを示すものではありません。

なので,新ルールということでもなし。もっぱら投資事業組合を連結の対象とするための指針という受けとめ方ができると思う。

 

新ルールの対象がJ-SOX法のように公開企業だけに限定されているのではなく、世の中のほとんどを占める未公開企業を含めた全企業であるためだ。中小企業で、特にリスク分散のために事業組合のような仕組みを多用する企業には大きなインパクトが生じる。

「世の中のほとんどを占める未公開企業」が依拠する(であろう)会社法によると,

404条第1

会計監査人設置会社は,(中略)連結計算書類を作成することができる。

404条第3

事業年度の末日において大会社であって証券取引法第
24条第1項の規定により有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものは,当該事業年度に係る連結計算書類を作成しなければならない。

とあるので,世の中の未公開企業(のほとんど)は,連結計算書類を作る必要はなさそう。

あと,あがっている具体例とか,用語の使い方(「焦げ付きの引当金」って?中途で失敗したのが分かったら実現損失だ)とか,「むー。」な感じです。

 

個人的な論点メモ。

  • 会計ルールが企業活動を阻害するのか?
  • 例外ルールの設定は実質を損なう抜け道にならないか?あるいは別の補完的なルールを必要とするのではないか?(例としては現行のリース会計)

 

あ,連結計算書類を作ってなくても,任意組合や匿名組合とかへの出資は,計算書類に反映させないといけないのです。

金融商品会計に関する実務指針第132

(前略)原則として,組合等の財産の持分相当額を出資金(中略)として計上し,組合等の営業により獲得した損益の持分相当額を当期の損益として計上する。(後略)

金融商品会計基準を厳密に適用すると,ですけど。



“監査小六法〈平成18年版〉” (中央経済社)

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